目の前に借家が3軒並んでいる。
3軒とも、住居人の顔を僕は知っている。
A棟は、ご高齢の女性。毎朝、デイサービスが訪れている。
我が家の息子が騒がしい時、玄関から顔を覗かせることがある。
B棟は、ご高齢の男性。杖を突いて歩くところをよく見かける。
片足が悪い。
C棟は、最近引っ越しておいでた。中年女性。
怒鳴り声をたまに耳にする。
それは、燃えるゴミの日だった。
エンジン音ではなかなか気づけないのだが、ドアの開閉音で、ハッとした。
しまった。忘れていた。
玄関を開けた、時すでに遅し。
羽島市の山田組の収集車は走り去っていた。
僕は、また数日、このゴミたちと付き合わなければいけない。
落胆した肩はそのままで、ゴミ置き場に目をやった。
このあたりのゴミ置き場はC棟の真横にある。
そこには、カセットコンロ専用のガス缶が二本置き去りにされていた。
ビニール袋に入れられている。
どこかの世帯のゴミ袋に混ざっていたのだろう。
しかし、これはかなり危険なことだと思う。
ガス缶に穴は空いていない。
つまり、爆発寸前なのだ。
こんなものを、燃えるゴミに混ぜ、収集車が気づかず回収したときに、
何かの静電気などに反応して爆発する可能性があることが何故分からないのか。
なんと無責任な住民たちであろうか。
次の日の朝。
ゴミ置き場にガス缶がなくなっていた。
自治体の方が持って行ったのか。それともカラスか。
ガス缶も気化するのでは?と思ってみた。
その日の昼。
B棟の男性が外を歩いていた。珍しく杖はついていない。
片手には・・・あのガス缶が二本。ビニール袋に入れられている。
男性はそれを持って、歩きづらそうに歩き、ゴミ置き場で立ち止まった。
その片手に持っているビニール袋を、そっと置いたのだ。
僕は思わず声をかけた。
「そのガス缶って、ご主人の?」
男性は答える。
「違う。今朝、オレの家の前に置いてあったんや。」
どういうことか。
「朝起きたら家の前に置いてあったんや。今回だけやないぞ。ペットボトルがよーけ置いてあったり、酷いときはタイヤが4本置いてあったんや。」
男性の住んでいるのはB棟。いくら何でもゴミ置き場と間違えるような所ではなかった。
一体、誰がそんなことをしでかすのか。
兎にも角にも、そのガス缶たちをほかっておくわけにはいかなかった。
「僕が処分しときますね。」
「悪いね。」
ビニール袋に入った状態で受け取った。
それから数日後の夜。
僕は翌日の現場の用意をしていた。
外にある階段を使って、一階と二階を行き来していた、その時。
そこに、人影があった。
あれは、・・・だと思う。
その人は、なぜかA棟の家の前に立っていた。
右手にはビニール袋。
僕は仕事の疲れと、迫ってくる時間を言い訳にしてその場をやり過ごした。
翌日の夕方、子供と外で遊びつつA棟の前を通った。
その家の前に、それはあったのだ。
ペットボトル二本、ガス缶二本、その他プラスチック類
そう、ビニール袋に入った状態で。
僕は立ち尽くしてから、何気なく振り向いた。その時・・・
C棟の女と目が合ったのだ。
つづく
多分。


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